人物が「反応的」だと面白くならない
ストーリー作りは難しいものです。「こうすれば面白いストーリーが出来る」という簡単なコツなどありません。多くの生徒が、ストーリーがうまく作れず四苦八苦しており、その原因はひとつではありません。
そんな中で、生徒の作品を読んでいて気づいたことがあります。「どうも面白くならず、盛り上がらないこの感じ、なんだろう」と考えるうちに、「反応的」という言葉が浮かんで来たのです。生徒が考えるストーリーには人物の反応的な行動が多いのです。
反応的というのは普段はあまり使わない言葉ですが、「主体的」の逆の意味です。ネットで調べると「主体性を発揮しようとしないで、起こったこと、さまざまな刺激、問題、事件、出来事に対し、そのまま感情的に反応してしまうこと」とあります。
脚本の勉強を始めると、「ドラマの主人公は能動的に行動しなければならない。受け身なだけではダメ」ということを聞くと思います。それを意識して人物に行動させようとしている人も多いでしょう。それでもなかなか面白いものにはならない原因のひとつが、「行動が反応的」だからです。
「人物が反応的」とは具体的にどういうことでしょうか。例えば風邪で熱が出たとき、病院に行くのは普通のことです。しかし僕は、この病院に行くという行為がドラマの中では反応的な行動という感じがするのです。病院に行くのは確かに「行動」であり、「病気を治そう」という自分の意思で行うことです。「人物は行動しなくてはいけないという条件をちゃんと満たしているではないか」と言われるとその通りです。しかしあまりに普通のことなので、面白さや意外性を伴わず、その人物のキャラクター表現にもならないのです。逆に「熱があるのにやせ我慢して病院に行かない」という選択をした方が、何となく面白い感じがせんか? 病院に「行かない」というのは一見行動していないようですが、「つまらない意地を張る」という主体的な行動をしています。それは普通ではなく、その人物の性格や考えによる「固有」のものなのです。それが面白さにつながって行きます。
ではドラマの人物は熱が出ても病院に行ってはいけないのか?というとそういうことではありません。もしかしたら病院に行って意外な人物との出会いがあったり、風邪の診察のつもりで行ったらがんが見つかったり、そこから面白いストーリーが展開するかもしれないからです。つまりその後の面白い展開を生み出すための「段取り」なら反応的な行動もありということです。
しかし生徒が考えることは、反応的なことばかり連鎖してしまうことが多いです。例えば「夫が妻と喧嘩する」「夫は友人に相談する」「友人は妻にプレゼントしろとアドバイスする」「夫はプレゼントを買いに行く」この流れの中で夫のやっていることは全部反応的で、あまり面白くありません。もちろん絶対に面白くならないということではありません。セリフやキャラが面白かったり、心の機微が繊細に描かれたりすると、流れは凡庸でも面白くなる可能性はあります。しかし少なくともこのストーリーを読んで「面白いな」と感じる人はいないでしょう。
百かゼロかという話ではないので難しいところですが、自分の考えたストーリー上の出来事が反応的ではないか、それが連鎖しすぎではないかということをチェックしてみるとよいと思います。
[尾崎将也 公式ブログ 2019年2月14日]