僕がやっていて他の人がやっていないかもしれないこと
今回は、僕が脚本を書くときにやっていることで、他の人はあまりやっていないかもしれないことを書いてみます。普段自分が当たり前のようにやっていることでも、他の人には「そんなことがあるのか」「自分もやってみよう」みたいなことがあるかもしれません。
①原稿にセルフ突っ込みをどんどん書き込む
脚本を書いていて、セリフ、ストーリー展開、人物描写などで、「ちょっといまいちかな」と思って考え直すということは当然あります。しかしよりベターなことがその場ではすぐに思いつかないこともあります。そのときは僕は原稿のその場にセルフ突っ込みをどんどん書き入れます。「このセリフいまいち」「ここ不自然」「こういうパターンもあるのでは」みたいに思ったことをどんどん言葉にして書いてしまうのです。そのとき他のセリフやト書きとごっちゃにならないように、行頭に★印を入れます。そしてそのまま作業を先に進めるのです。
もちろんその場で解決法を思いつけばそれでいいのです。しかしそこで考え込んで時間を費やすより、先に進んだ方がいいと思える場合もあります。解決を思いつくまで粘るか、先に進むかはその都度判断するわけですが、僕はそう難しく考えずに先に進む方を選びます。
いずれにしても、どこかの段階でこれらの突っ込みに対する解決法を思いついて、そこを直して★印をを消して行きます。エンドマークまで原稿が進んで、なおかつ途中に★印がひとつもない状態になれば原稿が完成ということです。
②途中で何度も印刷する
ほとんどの人が原稿をパソコン入力していると思います。入力しながらセリフやト書きを考え、書き込みながら先に進みます。そして途中で前に戻って読み返し、考え直すということもあるでしょう。僕は原稿が完成していない段階で、パソコン画面で読むだけでなく、紙に印刷して読むということを何度もやります。パソコン画面で読むのと紙で読むのと、読んでいる文字は同じなのですが、パソコン画面で見ているときに思いつかないことを紙で見たときに思いつくということがよくあります(誤字脱字に関しても同じ)。なぜそういうことが起るのかはよくわかりません。
このときに、赤で直しをどんどん紙に書き込んで行きます。上に書いた★印の部分に対する解決法もここで思いつくことが多いです。そして赤を入れたものを元に、再びパソコン入力する作業に戻ります。これを何度か繰り返して、原稿の完成に向かうのです。
③流れを紙に書く
原稿の途中段階で、ここまで書いた流れを箇条書きで書きます。「書いたところまでの箱書き」です。もし脚本を書く前に箱書きを書いており、その箱書き通りに脚本を書いているならこの作業は必要ないでしょう。でも僕は箱書きを書かず、プロットを書くと次に脚本に進むので、出来たところまでの流れを確認するためにこの作業をするのです。
この作業をすると、原稿を読み返すだけでは思いつかない問題やその解決法を思いついたりします。このシーンはいらないとか、ここにこういうシーンを挿入しようと思ったりします。またこれから先の展開を思いつく場合もあります。これらは赤で書き込みます。僕の中では直しや「未確定なこと」を赤で書くのがルールです。
④プロットを脚本フォーマットに貼り付ける
プロットができて脚本に進むことになると、僕はプロットの文章を脚本のフォーマットにコピペします。そしてそこにあるプロットの文章に対して、ト書きやセリフに置き換える作業をして行くのです。これの利点は、今どこまで脚本作業が進んでいるかわかりやすいのと、最終的にどれくらいの枚数になるかを感覚的につかみやすいということです。
生徒の場合、プロットで「そして二人の心が通じ合って行く」などと「そこを膨らませなきゃいけないところだろう」というところを一行で済ましてしまうことがよくあります。このやり方をすれば、「そして二人の心が通じ合って行く」という一文を目の前にして、「えっ、これをどうやって脚本にするんだ?」とプロットの問題点にも気づきやすくなるかもしれません。
脚本を書く作業は決まったお作法はなく、自分にとってやりやすい、効果的な方法を選んで行けばいいのです。以上に書いたことは、僕がたくさん仕事をする中で自然と考案したものです。ずっとやっているということは、自分にとっては効果的ということでしょう。
[尾崎将也 公式ブログ 2020年1月2日]