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映画の中の「増幅テクニック」の実例

Aug 02, 2017

CATEGORY : 脚本

 前回、脚本を面白くするテクニックのひとつ「増幅」について書いたところ、かなりの反響があったので、今回はその実例をいくつか紹介します。これらは、僕が映画を分析していて、「面白いな」と思ったところを「なぜ面白いのだろう」と考えた結果、「こういう増幅が行われているから面白いのだ」と気づいたところです。

[例1]
[作品]『昼下がりの情事』(ビリー・ワイルダー監督 57年)
[描写]ヒロインのアリアーヌ(オードリー・ヘップバーン)は男・フラナガン(ゲイリー・クーパー)と会って、彼のプレイボーイぶりに腹を立てる。翌日アリアーヌはフラナガンを非難する手紙を書く。しかし書き終わった手紙を火にくべて燃やしてしまう。
[解説]非難の手紙を書くものの燃やしてしまうことで、彼女が男にひかれていることを表現しています。例えば日記に「私、あの人にひかれてるみたい」と書く描写では単なる説明にしかなりませんが、「非難の手紙を書くが、燃やす」と一旦逆に振ることで「ああ、このあと恋に落ちて行くんだろうな」という感じがしみじみと伝わります。野球でバットを振るとき、一度逆方向に振りかぶってスイングすることで打球が遠くに飛ぶのとメカニズムは似ています。

[例2]
[作品]『アパートの鍵貸します』(ビリー・ワイルダー監督 60年)
[描写]主人公バクスター(ジャック・レモン)が落ち込んでバーで飲んでいると、おりしもクリスマスで、サンタクロースの恰好をした男が騒いでいる。
[解説]落ち込んだ主人公と同時に浮かれている人を存在させてコントラストをつけることで、主人公のやるせない気持ちを増幅する表現です。これは割とよく使われる手法です。『酔いどれ天使』(黒澤明監督 48年)で、主人公のヤクザ松永(三船敏郎)がうちひしがれた気持ちで街を歩いているとスピーカーから明るいカッコーワルツが流れてくるシーンなどもそうです。


[例3]
[作品]『刑事ジョン・ブック 目撃者』(ピーター・ウィアー監督 85年)
[描写]主人公の刑事ジョン・ブック(ハリソン・フォード)が敵に撃たれて怪我をして、アーミッシュの村に住む未亡人レイチェル(ケリー・マクギリス)の家に匿われる。レイチェルは危険だからとジョンの拳銃を預かる。ジョンが「銃を出してくれ」と言うと、レイチェルは小麦粉の中から粉まみれの銃を出す。
[解説]この作品は刑事ものであると同時にジョンとレイチェルのラブストーリーでもあります。荒っぽい世界に生きているジョンと平和的な暮らしをしているレイチェルの違いが、銃という暴力の象徴のようなものと小麦粉という生活を象徴するものをぶつけることで表現されています。銃が粉まみれになっていることで、ジョンがレイチェルに歩み寄って行く感じもわかります。そしてこれは不思議なことですが、このシーンを見ると、この二人がこれから恋に落ちるだろうということも感じられるのです。単に戸棚に仕舞ってある銃を出すだけでは、これらのことはほとんど表現されないのではないでしょうか。

[例4]
[作品]『ロッキー』(ジョン・G・アヴィルドセン監督 76年)
[描写]落ちぶれた暮らしをしていたボクサーのロッキー(シルヴェスター・スタローン)は、チャンピオンと試合をすることになる。彼に冷たく当たっていたミッキー(バージェス・メレディス)がトレーナーをやらせてくれと言ってくると、ロッキーは「今さらなんだ」と怒りをぶちまけて追い返す。しかし少ししてロッキーは肩を落として帰って行くミッキーを外に追いかけて行き、トレーナーになってくれと言って握手する。
[解説]自分に冷たくしていた男に「今さら何だ」と怒るのは当然として、このシーンでは、その会話の中でロッキーが考えを変えてトレーナーを頼むのではなく、一度は拒絶して追い返すものの、少しして思い直して外に追いかけて行くことで感動的なシーンになっています。ここでのロッキーの怒りは非常に激しく、とても同じ会話の中で考えを変える雰囲気ではありません。一度追い返してから、それでも追いかけて行くことでロッキーの優しさがしみじみと伝わります。振り幅を大きくすることで深みや感動が加わっているのです。

 これらの例を見ると、二つの要素を同時に見せるか、前後に並べることで増幅の効果が出ることが多いようです。当然のことながら、増幅するには、まず「何を」増幅するか、ドラマの中でこれは増幅すべきものだという考えがなくてはなりません。

[告知です]

映画「世界は今日から君のもの」
監督・脚本:尾崎将也 / 音楽・川井憲次 / 主題歌・藤原さくら「1995」
出演:門脇麦 三浦貴大 比留川游 マキタスポーツ YOUほか

渋谷シネパレスほかで上映中

※8月6日(日)、テアトル梅田で僕の舞台挨拶を開催します。詳しくは劇場公式サイトで。

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[尾崎将也 公式ブログ 2017年8月2日]

脚本の超重要テクニック「増幅」とは何か

Jul 21, 2017

CATEGORY : 脚本

 前回、カードの分類項目を示した中に「増幅」というのがありました。それについては「別の機会に詳しく」と書いたので、今回はそのことについてです。

 「増幅」というのは脚本を面白くするために非常に重要なテクニックです。この感覚を身につけるだけで作品が大きく変わるかもしれません。よく「粒立てる」「メリハリをつける」「振幅をつける」などと言いますが、同じようなカテゴリーのことです。
 「粒立てる」とか「メリハリをつける」というのは言葉としては何となくわかるので、教室などで「粒立てろ」「メリハリをつけろ」と言われれば「わかりました」と答えるでしょう。しかし実際にそれが出来る生徒は少ないです。その意味するところを理解し、どうすればそうなるのかという具体的なテクニックを知らないからです。
 単に人物の感情を激しくして「!」をたくさんつければよいのだと勘違いする人がいますが、そうではありません。もちろん「!」をつけることが効果的という場合もあるので、それも増幅のひとつの方法ということは出来ますが、それはほんの一部でしかありません。

 わかりやすい例を挙げます。映画「ゴースト~ニューヨークの幻」のワンシーンです。冒頭、主人公のサムは昔のコインが入った瓶を見つけて「お守りだよ」と恋人のモリーに渡します。これはいわば二人の愛のシンボルのようなものです。ところが物語の展開の中で絶望状態に陥ったモリーは、この瓶を階段の上から落として割ってしまいます。
 この瓶を割るシーンでは、モリーの絶望状態をお守りが入った瓶を割るという行為で「表現」しています。「私には何の希望もないわ」などと言うと単なる説明ですが、お守りの入った瓶を割るという行為でセリフなしで表現しているのです。
 そしてもう一つ、この描写の中には「増幅」というテクニックが隠されています。それは「お守りが瓶に入っている」ということです。お守りはコインであって、瓶はただの入れ物です。ではなぜコインが瓶に入っている設定にしたのでしょうか。それは階段から落としたときにガチャン!と割れる、そのショッキングな感じを出したかったからです。裸のコインを投げてもチャリンと転がるだけで、インパクトはありません。瓶に入っていることでガチャンと割れるショッキングな表現にすることが出来ます。
 この映画の脚本家は、最初サムがコインを裸の状態で見つけてモリーに渡す描写を書いたかもしれません。しかしこのシーンにさしかかったとき「コインだけ投げてもインパクトがないな」と思って瓶に入っていることにしようと思いついたのかもしれません。そして最初のシーンに戻ってコインが瓶に入っているというふうに書き直したのではないか。そんなふうに僕は想像します。
 これが「増幅」の一例です。ここはストーリーの中でも重要なシーンなので、作者はこのときのモリーの絶望を強調したいわけです。そのための方法が「瓶に入っている」ということなのです。
 面白い映画やドラマの中にはたくさんの増幅があります。こういうことをたくさんやることで作品は面白くなるのです。逆にこういうテクニックを知らず、何もしなければ、面白くならないのは当然です。
 まずは面白い映画を見て、「ここに増幅があるな」と気づくことから始めなければなりません。そのためには、自分が何を面白がっているかということをよく見つめることです。

[告知です]

映画「世界は今日から君のもの」
監督・脚本:尾崎将也 / 音楽・川井憲次 / 主題歌・藤原さくら「1995」
出演:門脇麦 三浦貴大 比留川游 マキタスポーツ YOUほか

渋谷シネパレスほかで上映中

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感想まとめ

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[尾崎将也 公式ブログ 2017年7月21日]

名作分析とカード作りはこうする

Jul 03, 2017

CATEGORY : 脚本

 拙著「3年でプロになれる脚本術」にも詳しく書きましたし、教室の講義でも話していることですが、僕は生徒時代、面白い映画を見て「どこがどう面白いか」「どんなテクニックやノウハウが使われているか」を分析して、一件一枚でカードを作りました。カードの数は全部で千何百枚かになりました。
 ノートに書くのではなくカードにする意味は、後で分類できるということです。一本の映画を見て気づいたことを、その映画ごとにノートに書くと、セリフとか構成とか色々な分野の事柄が混在することになりますが、カードならセリフはセリフなどで後で分類できるので、「この映画のここで使われているのは、こっちの映画のこれと同じテクニックだな」などと気づきやすいのです。
 別に決まったやり方はありませんので、自分なりに工夫してやってくださいという感じなのですが、ときどき教室の生徒やフォロワーの人から、具体的にどうするのかもっと教えて欲しいという質問を受けます。今回はそのへんについて書いてみます。

 まずは映画を見ます。そして「どこにどんな工夫やテクニックがあるかな」と考えます。工夫やテクニックがどこにあるかと言うと「面白いところ」です。だから自分が面白いと感じたところを思い出して、そこはどうして面白いのかなと考えればいいのです。そして「こういう工夫をしている。だから面白いんだ」と気づけば、それをカードに書くわけです。このとき、それがどんな分野(セリフかキャラクターかストーリーか、など)かも合わせて考え、書き込みます。例えばこんな感じです。

    [セリフ](※分類)

    「近松物語」
    茂兵衛のことが好きなお玉。茂兵衛の仕事を手伝う。
    茂兵衛「職人の女房にでもなる気か」
    お玉、泣き出す。
    (※具体的にどの作品のどんなシーン、または描写か)

    何気ないセリフで相手の気持ちを意図せず言い当ててしまう
    (※そこで使われている手法、またはそこから読み解けることなど)

 これは溝口健二監督の「近松物語」のワンシーンです。主人公の職人・茂兵衛(長谷川一夫)に密かに恋するお玉(南田洋子)という娘が、茂兵衛の仕事を手伝おうとします。茂兵衛はお玉に特別な感情はないので、「俺の仕事を手伝うなんて、職人の嫁にでもなりたいのか?」という意味でこのセリフを冗談として言います。お玉は図星を指されて動揺するのです。僕はここを見て「うまいな」と思いました。説明的でなく、男に冗談で意図せずに図星を指されたときの娘の気持ちもよく伝わり、今はその気持ちを隠そうとしている感じもよくわかるのです。またこのお玉の恋心が後にストーリーを動かす重要な要素となるので、ここはドラマ上、大切なところでもあります。
 これを凡庸にやった場合を想像してみましょう。お玉が友人に「私、茂兵衛さんのことが好きなの。でも彼って全然私の気持ちをわかってくれないのよね」などと言うことになるでしょう。これではただの説明でしかなく、気持ちがビビッドに伝わるようなことはありません。ただ「情報」が伝わっただけです。生徒は(またはプロでもときには)この凡庸なパターンを書いてしまい、「好きっていう気持ちを表現してるつもりなのに、どうして『面白い』と言われないのかな」と悩みます。
 後者のような状態を解消するためには、上記の「近松物語」のような例を見て、「なるほどうまいな。自分は、まだこういうことが出来ていない」と自覚することが必要です。そして自分もそういうことが出来る状態を目指す。そのためにカード作りをするのです。
 ただ、一枚カードを書いたからてきめんに効果が現れるというものではありません。効果が現れる、つまり「面白い」と言われるものが書けるようになるには、それなりの積み重ねが必要でしょう。数を積み重ねることで、「記憶の集合体」ではなく、まとまりのある「能力」になるのです。
 分類は自分なりに考えればいいでしょう。ちなみに僕は「セリフ」「ストーリー」「構成」「キャラクター」「心理描写」「恋愛心理」「発想」「小道具」「サスペンス」「増幅」などと分けました。「恋愛心理」をあえて「心理描写」と別にしているのは、それだけ難しいことであり、うまくなりたいという思いがあったからでしょう。
 例えば上の「近松物語」の例は、セリフであり、心理描写や恋愛心理にも該当するわけですが、そこはさほど気にしませんでした。どうしても気になるなら同じものを複数書いて、それぞれに入れればよいでしょう。
 「増幅」って何?と思う人もいるでしょうが、これは重要な話なので別の機会に詳しく書きます。
 「分析しようとしてもなかなかカードに書くようなことが思うつかない」という人がいますが、これは初心者なら普通のことです。面白い作品をたくさん見て、「考える」という行為を繰り返していると、少しずつわかるようになります。慣れれば、面白い映画を見て20枚とか30枚のカードが書けるようになりますが、最初の頃は3枚しか書けないということでもいいのです。数を重ねるほど、「この映画のここは、あの映画のあれと似てるな」というようなことが見えてくるはずです。また自分が実際に作品を書いて、どうしたらうまく行くだろうと悩んでいることが、面白い作品を見て「あっ、自分がうまく行かないことをここではうまくやってるじゃないか」などと気づくことにつながるのです。
 ただ、難しいのは、上にも書いたようにすぐに効果が見えるようなことではないということです。いつ効果が出るかわからないことを地道に続けることが出来るかどうかが、この勉強法の一番難しいところかもしれません。しかしどんな分野であれ、大きなことを修得するための苦労というのは同じようなものではないでしょうか。

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映画「世界は今日から君のもの」
監督・脚本:尾崎将也 / 音楽・川井憲次 / 主題歌・藤原さくら「1995」
出演:門脇麦 三浦貴大 比留川游 マキタスポーツ YOUほか

7月15日(土)から渋谷シネパレスほかで全国公開

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[尾崎将也 公式ブログ 2017年7月3日]

脚本初心者あるある

May 29, 2017

CATEGORY : 脚本

 僕は日本脚本家連盟スクールで講師をしており、半年ごとに本科で脚本の初心者を指導しています。もう十年以上やっていますが、長年やっていると初心者が書く作品によくあるパターンというのが見えて来ます。数え出すとたくさんあると思いますが、ここではそのいくつかを紹介します。これは脚本ではなくその前のプロット段階での話です。

●「テーマ(メッセージ)至上主義」
 先日、ツイッターにも書いたことです。僕が「これはストーリーになっていない」と言うと、その作品で訴えようとしているテーマを必死に話す人がいます。テーマがあるのはもちろんいいのですが、問題は、どうすればそれをストーリーの中で語ることが出来るかがまだ見えていないということです。拙著「3年でプロになれる脚本術」でも書きましたが、これは畑から取って来た野菜を土のついたまま皿にのせて「食え」と言っているようなものです。この例えでは「それでは食べられない。料理をしないと」ということがすぐにわかりますが、脚本の場合は「料理するとはどういうことか」を理解するとこ自体がとても難しいのです。

●「主人公の目の前の目的や行動と、背景にあるものが区別出来ない」
 刑事ドラマに例えるとわかりやすいのですが、刑事ドラマでは事件が起こり、主人公の刑事はその事件を解決すべく捜査します。この刑事は、強い正義感を持っていますが、この正義感は、刑事が捜査という行動を起こすためのモチベーションとなるものであって、正義感が直接ストーリーになるわけではありません。ストーリーになるのは「捜査の過程」です。生徒の多くはこの違いがなかなかわからないようです。「この刑事はこんなに強い正義感を持ってるんだ!」ということでドラマが出来たと勘違いしていて、「いや、捜査しないとストーリーにならない」と言うと「??」という反応です。これは上の「土がついたままの野菜」と「料理されたもの」の違いがわからないことに通じます。

●「主人公が他人と直接的に関わらない話をやろうとする」
 先日も生徒が書いた話の中に「一人で何かを探そうとする話」とか「一人で生活をする話」がありました。ドラマは、主人公と誰かが直接面と向かって葛藤するのを描くのが基本です。もちろん例外はありますが、初心者がわざわざ例外をやる必要はありません。上記のような話を選ぶのは、ドラマがどんなものかを知らずにたまたま選んでしまったということかもしれませんが、「無意識にドラマを避けた」というようなことがあるような気もします。

●「普通にある平凡な現象と、『面白い』ということが区別出来ない」
 就職活動をする学生を主人公に作品を書こうとした生徒がいました。この人のプロットでは主人公が企業研究をして、面接に行って......ということが描かれていますが、ストーリーらしいことは起こりません。というよりこの人はこれらの誰でもやる普通の行動がストーリーだと勘違いしているようです。また刑事ドラマの例えですが、刑事が毎日地道に聞き込みをする様子だけを延々と描いたものが面白いでしょうか。聞き込みをするうちに、ある手がかりを発見するというところからストーリーが動き出し、それが「面白い」ということにつながるのです。

●主人公の抱える事情と、ストーリーの区別が出来ない
 初心者のプロットには、主人公の抱える事情(例えば親に捨てられ、施設で苦労して育ったとか)を書き、それで枚数の半分くらいを費やしてしまうものがあります。でもそれは背景の説明であって、ストーリーはまだ始まっていません。「そんな主人公に、ある日こんなことが起こって......」というところからストーリーが始まるわけですが、こういうものを書く人は背景の説明でプロットを書いたと勘違いしており、肝心のストーリーはほとんど内容がないまま終わってしまいます。この問題を解決するのに効果的な方法を以前書いたので、こちらを読んでください。

 これらを読んで、「どうすればこういう問題を避けられるだろうか」と考えることにはあまり意味があるとは思えません。事前にいくら考えたところで、やはり問題にはぶち当たるのだと思います。その中で試行錯誤するしかありません。ではここに書いたようなことを読んで何の意味があるのかということですが、問題にぶつかったときに、その問題が何なのかが理解出来ていれば、そこから抜け出す方法や、その先の道筋を見つける近道になると思います。

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映画「世界は今日から君のもの」
監督・脚本:尾崎将也 / 音楽・川井憲次 / 主題歌・藤原さくら「1995」
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7月15日(土)から渋谷シネパレスほかで全国公開

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[尾崎将也 公式ブログ 2017年5月29日]

初心者がドラマの時間を捉えるための秘策

Feb 03, 2017

CATEGORY : 脚本

 脚本の初心者にとって難しいことのひとつに「ドラマの中の時間の流れを意識する」ということがあります。ドラマは時間の中に表現が存在しています。映画にせよテレビドラマにせよ演劇にせよ、再生または上映、上演され、作品が時間の中に流れることによって表現が成立します。それに対してドラマの設計図である脚本は、文字として存在しています。「何分」という時間の中で表現するドラマが、脚本では原稿「何枚」という別の形態で存在しているのです。プロの脚本家は、そのことを意識することはほとんどありません。自分が書いた脚本が映像化されることを日常的に経験しているので、ほとんど無意識化されているのです。
 しかし自分の作品が映像化されることのない脚本家志望者が「ドラマは時間の中にある」ということを捉えるのはなかなか難しいことです。初心者のプロットを読むと、1時間ドラマのつもりなのに短すぎたり、長すぎたりということがよくあります。またひとつのシーンの中でも、「いただきます」と食事を始めた人が原稿一枚分程度の会話をしただけで「ごちそうさま」とまるで1分で食べ終わったかのようなことを書いてしまったりします。
 では自分の作品が映像化されることのない脚本家志望者は、どうやってドラマの時間を捉えればいいのでしょうか。ここでは、その助けになる方法を紹介したいと思います。
 ストーリーを考えるとき、別に決まったお作法のようなものはありませんが、誰でもとりあえずは紙に思いついたことをメモするようなことから始めるのではないでしょうか。「こんな場面から始まって」「次にこんなことが起こって」などと箇条書きに書くでしょう。この作業を始める前に、紙に「矢印」を書きましょう。紙を横長に使うなら、図のように上端の右から左まで一本の線を書きます。

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 これが今回紹介する「時間を捉えるための秘策」です。これによって何が起こるかというと、「紙の右から左に向けて時間の流れができた」ということです。1時間ドラマ(正味45分)なら、ここに45分の時間が流れているということです。ここに思いついたストーリーを書いて行くわけですが、発端の出来事は当然、右端に書きます。さらにあとの流れを書くときに、時間の流れに沿って書くことを意識するのです。ドラマの真ん中あたりで起こることは真ん中あたりに書き、ラストシーンは左端に書くということです。この矢印が存在していることで、ある出来事が45分の中の何分くらいに位置しているかということを嫌でも意識せざるを得なくなるのです。
 また、主人公がストーリーが始まった時点で置かれている状況(つまりストーリーの前提となるもの)は、この矢印の下には存在しません。それは矢印の右端よりさらに右に存在しているものだからです。それは別紙に書くか、紙の右側にそういうことを書く欄を設けるのです。初心者のプロットでは、ストーリーが始まる前の設定を長々と書いて、プロットを書いたと錯覚することがあります。この方法では少なくともその誤解は避けられるはずです。
 「この方法を取ったとしても、『この展開がドラマだと何分に相当するか』ということはわからないのでは?」と思うかも知れません。それはその通りです。しかしこのやり方なら、「自分が20分くらいかと思ったことが、脚本にすると10分だった」とか「自分が考えたストーリーは後半の膨らましが足りないようだ」とかいうことをより明確に意識出来るはずです。どちらにせよ試行錯誤は必要なのです。どうせやるなら効率的に、正しい試行錯誤をしようということです。
 僕は以前は(プロになってからもしばらくは)ストーリーを考えるときはこのように紙にまず一本の矢印を書くことから始めていました。今はもう、その必要はなくなったので矢印を書くことはなくなりました。特に意識しなくても、紙の上にはいつも時間が流れているのです。

[告知]

 監督作「世界は今日から君のもの」(主演・門脇麦)が今年公開されます。

 書籍「3年でプロになれる脚本術」(河出書房新社)が発売中です。

[尾崎将也 公式ブログ 2017年2月3日]

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