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ストーリーってなんだっけ

Aug 27, 2013

CATEGORY : 脚本

教室で初心者に脚本を教えるときに苦労することのひとつが、「ストーリーとは何か」を説明することです。プロの脚本家は「面白いストーリーを作ること」には日々苦労していますが、「何でもいいから考えて」と言われれば、いくらでもストーリーを作り出すことが出来ます。ほとんど無意識にやっていることなので、いざ「ストーリーとは何か、どうやって作るのか」を説明しようとすると、「そう言えば何だっけ」とハタと困ってしまうのです。これは、自転車に乗れる人が乗れない人にどうすれば自転車に乗れるかを説明するのが難しいのに似ています。
またストーリーというものは、似て非なるものを作るのは割と簡単に出来ます。それは「因果関係のある出来事が時系列に並んでいる」状態です。この状態のものを書いてストーリーが出来たと思っている脚本の初心者に、ストーリーとは何かを説明するのはかなり骨の折れる作業です。
ドラマのストーリーの条件を改めて考えてみると、「一本の軸がある」「主人公が行動する」「主人公に目的がある」「対立・葛藤がある」などがあります。しかし「(例A)主人公が大事な仕事の前に風邪をひいてしまったが、周囲の反対を押し切って無理をして仕事をして、何とか仕事をやりとげ、そのあとで病院に行く」という出来事の流れは、上のストーリーの条件をクリアしていますが、これをストーリーとは呼べないでしょう。これではまだ出来事が並んでいるだけです。
では例Aをどう加工すれば、ストーリーになるのでしょうか。例えば「主人公は無理をして仕事したために倒れてしまう。高嶺の花だと思っていた社長秘書が看病してくれる」とか、「主人公は他の人に風邪をうつしてはいけないと思い、資料室で一人で仕事する。するとそこで何か意外なものを見つける」とか。こういうことを加えると、何かストーリーっぽくなって行きそうな感じがします(どれほど面白いかは別の話)。つまり何らかの「それからどうなるの?」と思わせるような事柄が必要ということでしょうか。
しかしここまで考えて、小津安二郎の「晩春」はどうなんだ?と思いが頭をもたげました。この映画は「父と娘が二人暮らしをしている。父は娘に結婚して欲しいと思っているが、娘はなかなか結婚しようとしない」というところから始まりますが「これからどうなるの?」と思わせるような出来事はなかなか起こりません。それがなくても面白く見ることが出来るのです。だとすると「これからどうなるの?」と思わせることは、ストーリーにとって十分条件であって必要条件ではないということになります。
ではストーリーがストーリーである最大の条件とは一体何なのか。色々と考えるうちに気づいたのが、「エモーション」です。例えば「娘を殺された父親が、復讐するために犯人を捜し始める」という発端のストーリーがあったとします。このあと父親が犯人を追い詰めていく過程が描かれ、最後には果たして復讐するのか否かということになって行くのでしょうが、この例は上に書いたいくつかの条件を満たしていると同時に、父親の復讐心という強いエモーションがあります。「晩春」にしても、「娘が結婚したら自分は寂しくなるが、それでも結婚して幸せになって欲しい」と思う父親の静かなエモーションが作品を貫いています。やはりストーリーがストーリーである最大の条件は「全体を貫く主人公のエモーション」ということか・・・いや、ちょっと待てよ・・・上の「例A」の場合も「仕事をやりとげたい」という主人公のエモーションはあるじゃないか・・・おそらく例Aの場合は、「仕事をするということ自体は風邪をひいていようがいまいが変わらない」という点が問題なのでしょう。つまり、これがストーリーになって行くためには、風邪をひいてもあくまで仕事をするという主人公のエモーションが、普通とは違う状況を生み出して行く必要があるということでしょうか。
ということで、ここでの仮の結論は「ストーリーがストーリーであるためには、主人公の一貫したエモーションが新しい状況や展開を生み出して行くことが必要」ということに一旦しておきたいと思います。しかしこの条件を満たしていないのにちゃんとストーリーになっている作品があるということに気づくかも知れないので、あくまで仮ということで。

〔尾崎将也 公式ブログ 2013年8月27日〕

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