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プールに飛び込む

Jun 09, 2013

CATEGORY : 脚本

教室の研修科の授業の中で、僕はよく生徒に対して「プールに飛び込め」という言い方をします。多くの生徒の作品が、足をちょっと水につけただけで「泳ぎました」と言っているような「感じ」がするからです。脚本を書くためには、その題材や登場人物の人生にザブンと飛び込んで、バシャバシャと泳ぐことが必要です。
でも言われた生徒の方は、脚本を書くということにおいて、足をちょっとつけただけというのと水に飛び込んで泳ぐということの違いがよくわからないようです。これまでの人生でそんなことをやったことがないので、自分がそれを出来ているのかどうかはもちろん、ドラマを書くにはそういうことが必要なのだということ自体がピンと来ないのだと思います。
この感じを説明するのはなかなか難しいのですが、具体的なバロメーターとしては、自分が主人公にどれだけ共感や理解をしているかということがあります。しかし共感している度合いを数字で計ることは出来ないし、「自分の共感は十分なのか」など判断するのは難しいことです。また人物を突き放したようなタッチの作品でもいい作品はあるし、とにかく共感さえすればいいというものでもなさそうです。
人物に対する理解の度合いは、例えば「その人にもしこんなことが起こったらどうするか?」という質問に「その人はそういうときはこうする」とすぐに答えられるかどうかで計れると思います。
よく人物の履歴書を書けと言いすまが、それはこのような共感や理解を起こすための方法なのだと思います。しかし履歴書はしょせんデータに過ぎず、それを書きさえすればOKなのかというとそれも違います。ドラマを書くために必要な共感や理解は、左脳的なものではなく右脳的なものです。履歴書というものがどうしても左脳的な感じがして、僕はあまりドラマ作りにはなじまない感じがします。もちろん全く無意味とは思いませんが。
このへんのことがある程度出来るようになると、脚本の中で「人物が動き始める」ということが起こります。それにしても、これらは全部自分の脳の中で起こることなので、スポーツのように「ほら、こうやって」とお手本を目に見える形で示すことが出来ません。「こうかな?こうかな?」と手探りでやって行くしかないのだと思います。プロになってからも、レベルこそ違えど、そういう手探りは常に続くわけです。プロの場合はプールに飛び込んだあと、どうやって泳ぐかということで日々四苦八苦しているのです。

〔尾崎将也公式ブログ 2013年6月9日〕

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