締め切り間際にならないとエンジンがかからないという問題
先日、日本脚本家連盟スクールの説明会&特別セミナーを浅野妙子さんと一緒にやりました。特に決まったテーマもなく、脚本家の仕事について雑談のように話したのですが、このとき話に出たのが、それぞれの仕事のやり方の違いです。浅野さんはとにかく毎日規則正しく一定のペースで仕事する人です。朝から夕方まできちんと机の前に座って仕事をして、それを4日くらいやると1時間ドラマの初稿が書けるとのこと。
尾崎将也の場合はどうかと言うと、1時間ドラマの初稿が4日くらいで書けるという点は同じなのですが、その中身が全然違います。僕は毎日一定のペースで作業するということが全く出来ません。最初は「まだ時間あるからいいや」とダラダラして、間際になって「まずい。時間がない」と慌ててやるというパターンです。締め切りの前の日は徹夜になったりします。
浅野さんが10の分量の作業を均等に2.5 ずつ4日でやっているとすると、僕の場合は同じ10の作業を1、1、3、5という配分でやっている感じです。最終日には毎回「どうしてもっと最初から規則正しく出来ないのかな」と思うのですが、すっかりこれがスタイルになっています。ただし、締め切りに遅れるということはあまりありません。プロデューサーには仕事が早い方だと言われることが多いです。このやり方のせいで脚本の完成が遅れて迷惑をかけたり、仕事が減ったりしたら大問題ですが、そういうこともなくプロの脚本家として仕事出来ているので、改善を迫られることもなく、同じパターンを続けているのです。これも前回書いた「箱書きをするかしないか」という件と同じで、人それぞれのスタイルなのです。
僕のようなスタイルのデメリットは、締め切り間際に急な予定が入ったときに対応出来ないということです。毎日規則正しくやるスタイルなら、最終日に何かの急用で半日くらい取られたとしても、原稿はもうかなり出来ているのでその日だけ夜遅くまでやるとかいうことで対応出来ます。しかし「間際タイプ」はその日徹夜してやっと間に合うという状況なので、用事に半日取られると締め切りを一日延ばしてもらうしかなくなってしまうのです。
そういう問題はあるとしても、まあプロとして仕事出来ている限りはどっちでもいいじゃないかということなのですが、ふと疑問に思うのは、こういう仕事のスタイルが作品の中身にも影響しているのかどうかです。これはハコ書きをするかしないかが脚本の中身に影響するか否かというのと同じような問題です。
「間際タイプ」のやり方が作品にプラスになるとすれば、「前半ダラダラしている間にも脳の中では色々と考えている。それが熟成されて、後半一気に出て来るのだ」とか「時間がなくなって焦る気持ちが瞬発力となって、いいアイデアが出るんだ」とかいうようなことでしょう。しかし事実はどうかわかりません。これを証明するためには、規則正しく仕事してみて、どちらが作品にいい影響を与えるか比較してみるしかないでしょう。でもそれは無理な話なので、永遠に答えは出ないと思います。
〔尾崎将也公式ブログ 2013年4月22日〕