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「起承転結」でもなく「三幕」でもないとしたら、何?

Mar 24, 2014

 また久々の更新となってしまいました。以前、『「起承転結」や「三幕」とか考える前に』という文章を書きました。そのときの内容をもう少しつっこんで書きます。

 脚本の構成には「起承転結」や「三幕」などいくつかの方法があります。僕も過去には色々と勉強もしたし、色々なやり方を試しましたが、今では脚本を書くときにこういったことはほとんど考えません。それよりも効果的な自分なりの構成法を発見したからです。
 その構成法とは......まず、ドラマを「一幕」「二幕」「三幕」とか「起」「承」「転」「結」とかで分けるのではなく、次のような六大要素に分けて考えます。それは「人物紹介」「状況設定(物語の始まり)」「展開」「盛り上がり」「クライマックス」「結末」です。これらの要素はドラマの流れの中に大体上に書いた順序で出て来るわけですが、他の構成法と違うのは、原稿の何枚目から何枚目が「人物紹介」で、その後が「状況設定」で、というふうに明確に分けて考えないということです。脚本の中には当然、人物紹介と状況設定を兼ねたシーンもあります。また展開しながら盛り上がって行くということもあります。
 この考え方の利点は、その言葉の意味を理解することで、構成というものにアプローチ出来るということです。例えば「一幕」「二幕」「三幕」はそれ自体は言葉としては意味を持っていません。「一幕」という言葉自体に意味がないのに、「一幕」の中身は何かを理解するのはなんだかすごく難しい気がします。「起承転結」はそれに比べると漢字自体が持つ意味がありますが、まだ抽象度が高いです。それに比べて「人物紹介」「状況設定」という言葉はそれ自体がわかりやすい言葉です。また、ドラマの中でそれぞれがどれくらいの位置にそれがあるか、感覚的にわかります。「人物紹介」や「状況設定」は最初の方にあるだろうし、「クライマックス」はかなり終わりの方でしょう。「結末」は当然一番最後です。「展開」「盛り上がり」はその中間になります。
 つまりドラマというのは、「登場人物」が「ある状況に置かれて」「物語が展開しながら」「盛り上がって行き」「クライマックス」を経て「結末に至る」ものだと理解し、それぞれの要素がちゃんと配置されているか、ドラマが六つの要素を満たしているかを考えながら作って行くのです。
 重要なことは、それぞれの言葉の意味をちゃんと理解するということです。「人物紹介」と「状況設定」は日本語としてはわかります。しかし「展開」と「盛り上がり」「クライマックス」に関してはそう簡単ではありません。いや、言葉自体はよく知っている言葉なのです。例えばスポーツ中継でアナウンサーが「意外な展開ですねえ」などど言ったりします。それを聞いて「意味がわからない」と思う人はいないでしょう。しかしドラマにおいて「展開」が何を意味するすか理解することはなかなか難しいことなのです。
 「物語を展開させなくてはいけない」と言われると「はい、展開させます」と答えるでしょうが、「はて、物語が展開するとはどういうことか?」という問いにちゃんと答えられるか。展開している状態と、していない状態の違いがわかるか。「盛り上がり」や「クライマックス」についても同様です。
 それらにアプローチするのは、やはり面白い映画を分析するのが一番の早道だと思います。例えば構成表を作って「ここまでに主要人物の紹介が終わってるな」とか「これからどんな物語が始まるかという状況設定がここで出来たな」とか「クライマックスはどこからだろう?」とか。こういうことをああでもない、こうでもないと考える。その積み重ねが大切です。
 「なんだ、結局難しいじゃないか」と言われたら確かにそうなのですが、「三幕」や「起承転結」よりはアプローチしやすいのではないかと僕は思っています。

〔尾崎将也 公式ブログ 2014年3月24日〕

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