物語を把握するということ
前回書いたことの補足です。
映画の構成表を作ることの大きな目的は、物語を把握することだと書きました。把握とは、そこにあるものをしっかりとつかむことです。隠されたをものを掘り出して見つけるようなことではありません。「表面に見えている物語を把握するくらい簡単じゃないか」と思うかも知れません。しかしこれが意外と難しいのです。特に初心者にとっては。
僕は教室の生徒に「自分が書いた物語を三行で言ってみて」とよく言いますが、ちゃんと言える人はまずいません。さんざん考えたあげく、ピントのずれたことを言う場合がほとんどです。また「自分が書いた物語を箇条書きにして書いて」と言うと、みんな自分の原稿を見返しながらでないと書くことが出来ません。自分が書いた物語ですら把握出来ていないのです。まして他人が作った映画を一度か二度見て、その物語が何か把握するのは慣れないうちはそう簡単なことではありません。
「E.T.」(82年 スティーヴン・スピルバーグ監督)を例に考えてみます。この作品の物語を三行で言うと「主人公の少年エリオットが、地球に取り残された宇宙人と出会い、仲良くなるが、彼が宇宙に帰りたがっているのを知り、送り返してやる話」です。大事なポイントは、エリオット自身がE.T.を宇宙に送り返してやろうと行動することです。単に「宇宙人と仲良くなったけど、時期が来て帰ると言うので仕方なく別れる」というだけだったら、大ヒットするような映画になったでしょうか。把握するというのはそういう本質を含めて捉えるということです。
あと、三行ストーリーを考えるときに気をつけなくてはいけないのは、あくまで具体的に、ということです。この映画は何を描こうとしているかという抽象的なテーマと、物語とは違います。
こういったことを理解して、物語をというものを扱えるようになるには、やはりたくさんの物語を把握するという訓練が必要だと思います。
※「シナリオ&ドラマ フェスティバル」の開催が近づいて来ましたので、再度告知させていただきます。
日程・2月24日(日)
場所・めぐろパーシモンホール小ホール(東急東横線・都立大学駅徒歩7分)
時間・朝9時45分から夕方4時
尾崎将也はこのうち昼12時半から2時まで行われる「カフェ・ラ・テ」公開録音に出演します。