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流れはこうなっている。で、何?(構成の勉強法・その2)

Feb 09, 2013

CATEGORY : 脚本

まず前回の補足です。映画の構成表を書くときは、シーンごとに簡潔に「場所はどこ、誰が何をする」と一行で書いてください。紙を二、三枚つなげたものに2時間の映画の内容が入るくらいです。時間の流れがひと目で見渡せることが必要なのです。追跡シーンのような短いシーンが連続するシークエンスは、シーンを逐一書いて行くとそこだけ行数が膨らんでしまうので、「追跡場面」とひとくくりにする方がいいでしょう。あと、始まって10分、20分と10分刻みくらいで印をつけておくと時間の流れがつかみやすくなります。

さて、とりあえず一本の作品の構成表が出来ました。まずはこの構成表をよく眺めてください。そして以下のようなことを確認して行ってください。「主人公は誰で、どこから登場しているか」「二番目の人物は誰で、どこで登場しているか」「主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か」「物語が大きく転換しているのはどこか」「クライマックスはどこか」「主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか」「逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか」等々。さらに起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か。三幕だとするとどこが分かれ目か。みたいなことを、あくまで時間の流れを意識しながら、ああでもないこうでもないと考えて行きます。これとは別に登場人物の相関関係図を書いてみるのもいいでしょう。

この作業は、例えば子供が機械を分解して中身はどんなふうになっているのか見るのに似ています。その結果何がわかるかよりも、とにかく中身がどうなっているか見たい、そんな感じです。そんな作業をあれこれとやって行くうちに、あら不思議、ふと気づくとドラマの構成というものがわかるようになっている......などということはありません。「この映画は確かにこういう流れになっている。だから何?」という状態です。

とりあえずはそれでいいのです。この作業は「この物語はこんな流れになっている」ということを把握することが主な目的なのです。流れを把握出来ていることを確認するために次にやることは、「この物語を三行で言うとどうなるか」「この物語を10~15項目くらいの箇条書きにするとどうなるか」の二つを考えて紙に書くことです。物語を三行で言うのは一見簡単に見えて、なかなか難しいことです。不要な部分を徹底的にそぎ落して、一番肝心なことを抽象的でなく具体的に言うためにはそこで語られている物語の本質をきちんと把握している必要があるからです。それがきちんと把握出来ていれば、元の映画や構成表を見直したりしないでも、サラサラと三行ストーリーと物語を箇条書きにしたものが書けるはずです。それが出来なければ、まだ把握出来ていないということです。
そういう作業の結果、その作品の物語が把握出来た状態になります。「それでどうなるの?」と疑問に思うでしょうが、とりあえずはそれでいいのです。あとは出来るだけ多く様々な映画でこの作業を繰り返して行きます。
この作業をひたすら数多くこなしていると、だんだん物語というものや構成というものが「腹に落ちる」状態になって行きます。物語には「型」があります。どうやら型というものは知識やデータという形で身につくことはないようです。理屈ではなく「ここでこうなったら、次はこうなる。だって普通そうでしょ?」と自然に自分の中から沸いて来るようになるのが理想なのです。「起承転結はそれぞれ何枚くらい」というのは、書いた後で数えたらそうなっていたというだけで、最初から数字に合わせて書くようなものではないのです。

ここまで読んでも、まだキツネにつままれたような感じの人が多いと思うので、このへんのことは補足出来ることがあれば今後も書いて行きたいと思います。

ここ数回で映画の分析方法を書いてきましたが、これは、あくまで「尾崎将也はこういうやり方をしました」ということなので、これをやらないと脚本家になれないとか、これしか方法はないとかいうことではありせんので、念のため。ただし僕自身が脚本家になる上で、これらの勉強が大いに役立っているのは確かだと思います。

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