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恋愛ドラマにおけるカセの種類

Sep 15, 2018

CATEGORY : 脚本

 先日教室の授業で恋愛ドラマのカセについての質問が出たのでブログに書いておきます。どんなドラマにもカセが必要です。カセとは人物を阻むハードル、もっと簡単に言うと人物を困らせたり悩ませたりするもののことで、人物の「目的」と対立するものです。恋愛ドラマなら人物の目的は「あの人が好き。あの人と結ばれたい」ということになり、それを邪魔するものがカセです。以下、具体的に恋愛ドラマにおけるカセにどんなものがあるか列挙してみます。

(1)好きな相手が自分のことを好きになってくれない
 「あの人と結ばれたい」という人物を阻む最大のカセがこれだと言えるでしょう。しかしこのカセだけで全体を通す作品は案外少ないです。主人公が相手を追いかけ、相手が拒否するだけでは面白くなりにくいからでしょう。「男はつらいよ」シリーズでは主人公の寅さんは毎回マドンナに失恋しますが、マドンナは寅さんを拒絶するわけではなく、二人の間に心の交流が生まれ、「この二人、ひょっとしたらうまく行くかも?」と思わせる場合が多いです。相手が主人公をずっと拒否し続ける作品では「101回目のプロポーズ」があります。

(2)周囲の状況がカセになる場合
 主人公の男女の気持ち以外の要素がカセになる場合です。典型的なのが「ロミオとジュリエット」で、二人は好き同士なのにお互いの家が敵同士であることがカセになります。その他に「病気」「貧乏」「戦争」「災害」「身分や立場の違い」「差別や偏見」「距離的に離れていること」「すでに別の人と結婚していること」など色々あります。親が「あんな奴との結婚は許さん!」と言うのもこの一種ですが、この場合は親が反対する理由(貧乏とか家柄とか)の方がカセだという考え方も出来ます。

(3)ライバル
 どんなラブストーリーにも大抵ライバルが登場します。ライバルは主人公より優れた部分を持っているのが普通です。ルックスとか金とか学歴とか家柄とか。それがないと主人公にとって脅威にならない(カセにならない)からです。
 ライバルを嫌な性格にするか、いい性格にするかでドラマが大きく変わります。例えばヒロインが嫌な性格のライバルと婚約した場合は、ヒロインがなぜそんな選択をしたのかでヒロインのキャラが変わって来ます。「タイタニック」の場合はヒロインのローズが嫌な金持ち男と婚約したのは自分の家を経済的に助けるためで、本人は全く相手を好きではないという設定です。
 「ライバルがいい人」の典型的な例は「風と共に去りぬ」です。ヒロインのスカーレットが自由奔放なキャラなのに対してライバルのメラニーは良妻賢母的な優しい性格で、「ほとんどの男はメラニーを選ぶだろう」と思えるくらいいい人として描かれています。

(4)お互いの心の中のカセ
 お互いに憎からず思っているのに、自分の気持ちに素直になれなかったり。勇気を出して好きと言えなかったりする場合です。つまりカセは自分の心の中にあるということです。「恋人たちの予感」にはほとんどこのカセしかありません。誰が反対するわけでもなく、強力なライバルがいるわけでもなく、身分や病気が二人を阻むわけでもありません。それでも面白い作品を作ることは出来るのです。現代は昔に比べると、身分や貧乏や親の反対など恋愛のカセになるものが少ないので、この種類のカセの重要度が増していると言えます。僕が脚本を書いた「結婚できない男」は「主人公の性格」が唯一のカセです。

 普通は以上のカセのバリエーションと、その組み合わせでストーリーが作られます。例えば「主人公が仕事のために彼女との約束の場所に行けない」という場合、仕事が忙し過ぎるというのは(2)の外部にあるカセですが、「つい仕事を優先してしまう」というのは(4)の心の中のカセで、それらが組み合わされています。プロはいちいちこのストーリーのカセはこれだなどと考えなくても無意識に複数のカセを組み合わせてストーリーを作ります。初心者は意識的に考える必要があるでしょう。

 携帯電話が普及し始めたとき、「携帯電話のせいで恋愛ドラマは作りにくくなるだろう」と言われました。いつでも気軽に連絡出来ることで恋愛のすれ違いがなくなってしまい、ストーリーが作りにくくなると思われたのです。でもふと気づくと、そんなことは全然気にせずドラマを作っています。今、「スマホのせいで恋愛ドラマが作りにくい」と言う人はいません。どんなに世の中が便利になっても人間にとってのカセは至る所にあり、なくなることはないということだと思います。

[尾崎将也 公式ブログ 2018年9月15日]

 

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