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007のミサイルはなぜ曲線を描いて飛ぶのか

Jan 19, 2013

CATEGORY : 映画

新作「スカイフォール」が公開され、全作品が入ったブルー・レイBOXも出て、最近話題になることが多い007について思うところを書いてみます。

僕が007シリーズで好きな定番シーンがあります。それは「悪者がボンドを命の危険に追い込んでおきながら逃げられる可能性を残して結果を見ずに立ち去る」というシーンです。例えば「死ぬのは奴らだ」では、人食いワニがたくさんいる池の真ん中にある小島にボンドを放置して、悪者は結果を見ずに去って行きます。人食いワニはどんどんボンドに迫って来る。ボンド危うし! この危機をどうやって脱出するかは実際に映画を見ていただくとして、このシーンを見て沸く疑問は「ボンドを殺したいなら手の込んだことをしないで銃で撃てばいいじゃないか」とか「ちゃんとボンドが死ぬまで見てろよ」ということです。その疑問に対する答えは「この方が面白いからいいんだよ!」ということですが、最近のダニエル・クレイグ主演のボンド映画では、もうそんなシーンはありません。今の観客がそんなシーンはバカバカしくて受け入れてくれないと作り手が思っているからでしょう。
中学の頃から007マニアだった僕は、このシリーズのそういうバカバカしさが好きなのです。このシリーズ本来の面白さは、「本家がすでにパロディみたい」ということでした。例えば「ロシアより愛をこめて」でスペクターの女幹部ローザ・クレップは、爪先に刃を仕込んだ靴でボンドと対決しますが、どう見てもフツーにナイフを手に持った方が闘いやすそう。「ダイヤモンドは永遠に」では、悪者がボンドに銃を突きつけながら銃を取り上げようとポケットに手を入れると、そこには小型のネズミ取りが仕掛けてあって悪者が「いてて」となっている間に形勢逆転。「ゴールドフィンガー」ではボンドが水中を泳いで敵地に潜入するとき、カムフラージュのために頭にアヒルの人形を装着。そんなものつけると却って目立つだろうに。
そしてこのシリーズにおける素晴らしいバカバカしさの最たるものは、第1作「ドクター・ノオ」から第11作「ムーン・レイカー」まで美術を担当したケン・アダムによる巨大セット(ケン・アダムはキューブリックの「博士の異常な愛情」の美術を担当したことでも有名)。毎回悪者たちは、「いつの間に誰が建設したんだ」という疑問や実用性は無視してカッコイイことやアート的美しさを追求した基地で世界征服規模の陰謀を巡らすのです。
あとひとつ「これこそ007」と僕が感動したポイントを紹介します。「私を愛したスパイ」のクライマックス、核ミサイルが発射されてしまい、基地内の大画面の地図上にミサイルの軌跡が現れます。このとき、地図上だから直線になるはずの軌跡が、なぜか放物線を描きます。それだとミサイルはカーブして飛んでいることになってしまいますが、作り手はあえてそのようにしたのです。なぜかと言えば、その方がミサイルが飛んでいる実感が出るからでしょう。そうやってリアリティよりわかりやすさを選ぶ姿勢、常に大衆に向いた目線が僕は好きです。

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