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脚本の超重要テクニック「増幅」とは何か

Jul 21, 2017

CATEGORY : 脚本

 前回、カードの分類項目を示した中に「増幅」というのがありました。それについては「別の機会に詳しく」と書いたので、今回はそのことについてです。

 「増幅」というのは脚本を面白くするために非常に重要なテクニックです。この感覚を身につけるだけで作品が大きく変わるかもしれません。よく「粒立てる」「メリハリをつける」「振幅をつける」などと言いますが、同じようなカテゴリーのことです。
 「粒立てる」とか「メリハリをつける」というのは言葉としては何となくわかるので、教室などで「粒立てろ」「メリハリをつけろ」と言われれば「わかりました」と答えるでしょう。しかし実際にそれが出来る生徒は少ないです。その意味するところを理解し、どうすればそうなるのかという具体的なテクニックを知らないからです。
 単に人物の感情を激しくして「!」をたくさんつければよいのだと勘違いする人がいますが、そうではありません。もちろん「!」をつけることが効果的という場合もあるので、それも増幅のひとつの方法ということは出来ますが、それはほんの一部でしかありません。

 わかりやすい例を挙げます。映画「ゴースト~ニューヨークの幻」のワンシーンです。冒頭、主人公のサムは昔のコインが入った瓶を見つけて「お守りだよ」と恋人のモリーに渡します。これはいわば二人の愛のシンボルのようなものです。ところが物語の展開の中で絶望状態に陥ったモリーは、この瓶を階段の上から落として割ってしまいます。
 この瓶を割るシーンでは、モリーの絶望状態をお守りが入った瓶を割るという行為で「表現」しています。「私には何の希望もないわ」などと言うと単なる説明ですが、お守りの入った瓶を割るという行為でセリフなしで表現しているのです。
 そしてもう一つ、この描写の中には「増幅」というテクニックが隠されています。それは「お守りが瓶に入っている」ということです。お守りはコインであって、瓶はただの入れ物です。ではなぜコインが瓶に入っている設定にしたのでしょうか。それは階段から落としたときにガチャン!と割れる、そのショッキングな感じを出したかったからです。裸のコインを投げてもチャリンと転がるだけで、インパクトはありません。瓶に入っていることでガチャンと割れるショッキングな表現にすることが出来ます。
 この映画の脚本家は、最初サムがコインを裸の状態で見つけてモリーに渡す描写を書いたかもしれません。しかしこのシーンにさしかかったとき「コインだけ投げてもインパクトがないな」と思って瓶に入っていることにしようと思いついたのかもしれません。そして最初のシーンに戻ってコインが瓶に入っているというふうに書き直したのではないか。そんなふうに僕は想像します。
 これが「増幅」の一例です。ここはストーリーの中でも重要なシーンなので、作者はこのときのモリーの絶望を強調したいわけです。そのための方法が「瓶に入っている」ということなのです。
 面白い映画やドラマの中にはたくさんの増幅があります。こういうことをたくさんやることで作品は面白くなるのです。逆にこういうテクニックを知らず、何もしなければ、面白くならないのは当然です。
 まずは面白い映画を見て、「ここに増幅があるな」と気づくことから始めなければなりません。そのためには、自分が何を面白がっているかということをよく見つめることです。

[告知です]

映画「世界は今日から君のもの」
監督・脚本:尾崎将也 / 音楽・川井憲次 / 主題歌・藤原さくら「1995」
出演:門脇麦 三浦貴大 比留川游 マキタスポーツ YOUほか

渋谷シネパレスほかで上映中

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感想まとめ

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[尾崎将也 公式ブログ 2017年7月21日]

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