連ドラはこうして作られる(その1)~企画と物語の違いは何か
現在、4月から放送開始の連続ドラマ「ダブルス~二人の刑事」(テレビ朝日、木曜9時)を執筆中です。今回は民放の連続ドラマがどのように作られて行くかということについて書いてみます。
脚本家の仕事は、ある日プロデューサーから「今度の×月クールの連ドラを書かないか」と言われるところから始まります。ほとんどの場合、その時点で主演の俳優が決まっています。つまり「この人を主演にして、どんなドラマをやると面白いか」ということを考え始めるわけです。このときプロデューサーや主演俳優から「こんなものをやりたい」というリクエストがある場合もあれば、全くの白紙の場合もあります。もちろんマンガや小説などの原作がある場合もありますが、僕は長い間原作ものをやったことがありません。別に避けているわけではないのですが、「尾崎将也はオリジナルもの」というイメージが強いのかも知れません。
原作がない場合は、脚本家とプロデューサーでああでもこうでもないと色々と案を出し合って「企画」を作って行きます。そして「これで行こう」という企画が出来たところで脚本家が企画書にまとめます。この企画書は、主演の俳優(とその事務所)に最終的な出演OKをもらうためというのが主な目的です。ここで企画の修正が必要になることもあれば、完全にボツになって新しく考えなければいけない場合もあります。
企画が決まったら、脚本家は必要に応じて取材をしたり資料を読んだりしながら第一話の執筆作業に入ります。この過程で登場人物が固まって行き、プロデューサーは主演以外の出演者を決めて行きます。1話の脚本が出来てメインキャストが決まれば、ドラマの全体像が固まったという感じです。ものすごく大雑把ですが、こんな感じで連ドラの作業はスタートします。
今回は「企画」が固まるまでのお話でした。企画を考える作業は、気に入らなければリセットして最初から考え直せばいいという気軽さがあって、連ドラを作る作業の中では一番楽しい時期だと言えます。
このあたりの作業をしていてよく思うのは「企画」と「物語」の違いは何か、ということです。企画を考える作業の中には、当然登場人物や物語を考える作業も入っています。しかし面白い物語を思いつけばそれが企画になるのかというと、そうでもありません。企画は出演者や放送枠なども含めたドラマ全体のパッケージを構築する作業と言えまず。逆に「阿部寛さんが専業主夫を演じると面白いのでは?」という一発アイデアもまた企画です。「企画作り」は「見ようという気にさせる作業」で、「物語作り」は「見始めた人に面白がってもらう作業」と言うと、わかりやすいかも知れません。
2話以降の毎回の脚本を書いて行く作業についてはまた次回。